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 2006.03.02 Thu


お昼寝ちゃんとしなかったら
晩ご飯の時ねむくなるでしょ
「うん」
お父さんと一緒にお風呂も入れないよ
「うん」
そんなのがいいの
「うん」
一緒にご飯も食べないし
一緒にお風呂も入らない人は
そんなのお家の人と違うからね
「うん」
よその人だからね
「うん わかった」
そんならもうお外いきなさい
よその子になりなさい
「わかった」

玄関ドアを開けると
裸足に靴を履いて上着も着ずに
すぱすぱと2歳児は出て行った

居間の窓から玄関は死角
しばらく待つ
ここから姿が見えないということは
車道の方には出ていない
廊下の窓にまわる
カーテンを細く割って外を見た
レースが邪魔でよく見えない
こうしている間に車道に出たか
見知らぬ車が近づいて
次に会う時は遺体

居間に戻る
やはり見えない
もう誰かに手を引かれて
あるいは抱かれて行ってしまったのか
息をつめて様子をうかがう玄関ドアの
向こうにかすかな
靴音
まだ そこに

居間に戻って待ってみる
やがて
小さな頭が窓の向こうを動いてゆく
そこで止まりなさい

どこへ行こうか思案の風情に
裏道から近づくバイクの音
軒下へ逃げ込んで息を殺している
壁一枚隔てた向こうが
透けて見える気がした

バイクが去ったのを見届けて
そろりとまた姿を現す
見えない部屋のうちをうかがい
途方に暮れた肩 はやく 突然両手で顔を覆う はやく 目をこすり はやく
向きを変えて はやく 二三歩あるいたせいで はやく またもや死角に入る
はやく 少し間があって はやく はやく 「うわぁーん」と泣き声 やっと
靴を履き、ドアを開けて迎えにゆける

試したのは
こどもではなく
自分








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01:36:46 | 小さき人たち | コメント(2)

 2006.03.02 Thu


通園バスに乗り込む3人の男の子
この春からは
みな離ればなれになってしまう
一人は卒園
一人は転勤
一人残る我が子
という未来を知ってか知らずか
このところ毎朝
最前列のシートに身を寄せ合って座る

最初の停留所なので
他にこどもはおらず
いくらでも席はあるのに
かさばる鞄やコートをつめ合って
3人真面目な顔でこちらに手を振る

「いってらっしゃい」

巣の中の子ツバメみたい
ふふふ
と笑い合う母親たち
にもまた
近づく別れ





17:09:12 | 小さき人たち | コメント(0)

 2006.03.05 Sun


「ガイコクがあったら、すぐに言ってね」
こっきのえほん を開きながら言う

え、外国って全部だよ
このご本に載ってるのは全部外国

「ちがうの、アメリカとかじゃなくて、ガイコク」

ん、あのね、外国じゃないのは、ほら、この日本だけ
あとはアメリカも中国もインドもイタリアも
日本でないヨソの国はぜんぶ外国なの

5歳児に教える 「外国」の定義


「マカちゃんと、イッセくんと、おかさんと、おとさんは、なかま」
あー、おしいね
それは「仲間」じゃなくて「家族」なんだわ

「カゾク?」

2歳児に教える 「家族」の定義






00:18:45 | 小さき人たち | コメント(2)

 2006.03.09 Thu


  みてみて お母さん
  もう上着いらんから
  こんなに速く走れる


寒かろうと着せていた上着を
脱ぎ捨てる季節が来たことを
あなたは 心底 喜んでいる



いつか
遠い日の春に
もっとたくさんのものを脱ぎ捨てて駈けて行く
そのためのエチュード















09:04:08 | 小さき人たち | コメント(2)

 2006.03.14 Tue
「おかあさん、塩ってなんでカライの」




海の水でできてるからだよ

海の水をくみ上げて
広い砂の上に広げる
何度も繰り返してよく沁みた砂を
掻いて 掻いて 集めて
もう一度水を与えて濾し
大きな釜で煮詰めて結晶にする

何千年も昔から
人は海を煮詰めてきた
地球で一番広い面積を占めるもの
すべての命の源を
白く固めて口にしてきた

シオとヒト
酷似した元素組成

海に囲まれた私たちの国
命に囲まれた国
すべての海はつながっているのに
ところによって
その塩の味は違うという話




「ほんならチョコレート味もあるかな!」



            話を最後だけ聞くな。









17:28:30 | 小さき人たち | コメント(3)

 2006.03.17 Fri
夕食時
娘の後ろ髪に取り憑いて何度も引く者あり
そのあたりをつかんで闇の底へ連れ去ろうとする

朦朧としてゆく意識の中で
その力に抗おうとしつつも
不意を食らって
バランスを崩し
椅子から転げ落ちそうになる娘
その度
めそめそ泣く
「これ、起きなさい」
声をかけると気配を消す
娘はしばし我にかえる

お友達が来て お昼寝できなかったからね
もうごはん 食べなくてもいいよ
無理しなくていいから ねんねしなさい

イヤー タベルー ゼンブタベルー

あのなぁお母さん、
ぼく今度は電車のってどこか行きたい
そうねぇ、もうすぐ春休みだから
お天気のいい日にどこかゆこうねぇ

5秒間兄の相手をしたすきに
また怪しき者の気配
引くばかりではなく
ときどき小突く
あっと思う間もなく
茶碗の中に顔を伏せ
飯にまみれてまためそめそ泣く娘

ほら、もうやめなさい
ごちそうさま言いなさい

娘の首筋に取り憑いた者が にやりと笑う

顔と手をぬぐい
抱えて部屋まで運び
ようよう着替えさせ
布団をかける

オハナシ カケテ

CDのスイッチを入れて振り返ると
娘はすでに闇の底
異界で何を見てくるのか
こんな夜は決まって何度も泣いて起きる





23:26:23 | 小さき人たち | コメント(0)
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