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 2006.09.01 Fri






喉がやたらと渇いて朝から冷たい物ばかり飲んでいる
飲めばかすかな痛みを伴って液体はしみ渡るのだが
潤う感覚はどれほども続かない
コップ一杯の水をなるべく時間をかけて飲み
飲み終わる頃には次の渇きがかすかに始まっている

あまり飲んでばかりいるので出る量も多い
昼近くなってトイレに立つ回数が増え
出るものは匂いもなくただ体の中を素通りした水のようだ
出てしまったことを確認するともう喉が渇いてたまらない
渇きの面積は喉だけでなくもっと奥へ
食道から胃の中へ広がっているような気がする

飲んでばかりで他のことができないので少し我慢してみたが
喉の渇きへの苛立ちばかりが私の思考を占領して結局何も手に付かない
眠ってしまえば忘れられるかもしれないと思ってベッドに倒れ込んだ途端
体の奥底にたまっていた水が一気に喉元まで逆流してきて驚いて身を起こした
自分がペットボトルになったような気がした

生温かい水の感覚が舌の奥に残る
胃液の混じったような臭いはなく
ただ飲んだ時と変わらない水が体温で温められただけのようだ
今度は注意深く少しずつ体を倒してみる
下腹部にたまった液体が傾斜に従って体の中を昇ってくるのが分かる
ベッドに肘をついたところで水の上端が鎖骨の辺りまで来て怖くなって体を戻した

座ったまま眠ることにした
壁にもたれ両脇にクッションを抱えて体が倒れないように固定した
こんな姿勢で眠れるものだろうかと思ったが
朝からの自分の異変に追われて精神的にかなり参っていたらしく
サイドテーブルに用意したグラスの水を半分ほど飲んだところでうとうとし始めたようだ

どれくらい眠ったのか激しい渇きで目が覚めた
不自然な体勢で眠ったので体中が痛い
もたれきった体を前屈みに起こそうともがくと
体の中でかすかに金属の擦れ合う音がした
沈み込むクッションに手をついてそろりと体をひねると
喉の奥からスチールの蛇腹のパイプを曲げるような軋みが聞こえて
体の深いところから空気がこみ上げた
喉元でそれが水ではないことを確認して口から解き放つ瞬間
鼻の奥に強い刺激を感じて思わず手で覆った
震えが止まらなくなった

こみ上げたガスは
強いガソリンのにおいがした











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23:54:57 | 未分類 | コメント(2)

 2006.09.02 Sat






家の近くの建築現場に
ミキサー車が来た
絵を描きたいという子どもを連れて
傍まで寄ってみた

作業をしている男性に了解をもらい
少し離れた縁石に並んで腰を下ろした
スケッチブックを開いた子どもは
真剣な目つきで鉛筆を握りしめる

レバーひとつの操作で流れ出すセメントは
それを受ける機械に流れ込み
ドラムの中で撹拌されて太いパイプに送り出される
その均一な液体が
放置することでやがて均一な固体になるという
アタリマエのフシギに惹かれた

普段から
体の部分によって重さが異なることに疑問を抱いていた私は
その均一という状態に強く羨望する
私という形の鋳型を取って
中身をこの機械に放り込み
すっかり均一に撹拌してから流し入れ
一晩放置して固める

鋳型から取り出された素晴らしく均一な私は
素晴らしく均一な思考をし
素晴らしく均一な存在をするに違いない

絵を描く子どもの横で膝を抱える私
素晴らしく均一な感覚で全方位を捉える 完全な石











18:28:12 | 小さき人たち | コメント(1)

 2006.09.03 Sun












相手の言葉を十分に受け止めながら

同時に

次の自分の言葉を十分に研ぎ澄ます











00:35:54 | 未分類 | コメント(1)

 2006.09.03 Sun






昼間はどこにいるのか分からないほど
木屑の中に潜り込み眠るカブトムシ
夕刻
気がつけばいつの間にか這い出して
せわしなくプラスチックの箱の中を巡り
朽ち木に昇っては飛行を試みる
狭い空間に翅を痛め落下する衝撃は
記憶としてどのくらい彼の中に留まるのだろう
屋根があることが分からず痛みの余韻をこらえて何度も羽ばたくのか
朽ち木に這い上がる頃には落下した事実を忘れてしまっているのか
どちらの愚かさだろうと
ひと夏中思った

朝晩が涼しくなったここ数日
彼の衰えが著しい

朝になっても姿を隠すのを忘れてエサ台の上で眠りこけていたり
まだ日が高いうちにごそごそと起き出してきて徘徊したり
動きが緩慢になってひっくり返るとなかなか起き上がれなかったり
プラスチックの壁を伝う前足がかすかに震えていることや
そういえばもうずいぶん前から飛ぶ音を聞いていないことや

すぐ傍にゼリーを与えるが
壁に向かって夢中で空回りする前足はまるで方向違いを目指す
じっとその動きを見つめていた子どもは

「帰りたいんだよ 生まれたところに
 帰りたいんだよ 僕にはそう聞こえる
 お母さんには 分からないの」と言った

ここを出て 今更帰れということの残酷さを思うほど
おまえもまだ育ってはいないのだ 黙って世話をしてやりなさい

「お母さんには聞こえなかったよ
 毎日お世話をしているから
 おまえはじろうのお話が分かるんだね
 じろうはきっとおまえの傍が好きだよ」

飼育箱の中
全長6.5センチの老い
夏の終わり











15:17:47 | 小さき人たち | コメント(2)

 2006.09.05 Tue












中学高校時代の恩師が亡くなった

久々に顔を揃えた級友はみな十分な大人だったが

泣きはらした目で遺影に手を合わせる

その横顔はみな生徒だった











23:27:48 | 未分類 | コメント(0)

 2006.09.06 Wed



中学高校時代の恩師が亡くなった
担当教科は数学で
苦手な私は
人柄は愛したが授業は憂鬱だった

忘れ物や成績の咎で教鞭で生徒を叩く
それがまだ当たり前の時代だった
痛かった
痛くても心は数学には向かわず
私はずいぶん叩かれた

穏やかな笑顔とゆったりした口調と
なぜかぼろぼろの背広と
叱る時の厳しさのコンビネーションが絶妙で
畏れつつも信頼し
わけもなく安心させられた
けれどやはりその存在は怖かった

中学の3年間
毎年のクラス替えをかいくぐって
私はなぜかずっと彼のクラスだった
数学の成績は常に底辺だったので
他の科目がよくできた時でも
保護者懇談会は気が重かった
二者面談というのもあって
親と担任が私不在のところで私について話す
そのシステムだけでもう既に
十代の私には疎ましかった

中学三年のはじめ
文理の進路を分ける懇談会で二者面談があり
出席した母がサバサバとした表情で帰ってきた
私の数学ができないことを悔やむ母に
彼は言ったのだそうだ
「お母さん、この子にこれ以上望むのは酷ですよ
 この子はこれでええじゃないですか」
報告を受けた私は拍子抜けした
見放されたように感じた
友人関係や清掃の態度やクラブ活動や
見ているはずもないことばかりほめてもらい
妙に納得して帰ってきた母が憎らしく
二人揃って私に見切りを付けたのだと悔しかった
数学の先生だから
数学の点数で私の人格を測られた
私は生涯この人に許されることはないのだと思った
心が離れた

そのくせ
面と向かって話をすると
思わぬ励ましをもらったり些細な行動をほめられた
だまされるもんかと思った
思いながらも
あたたまった心をこっそり反芻した

社会人になり
母校で国語の教鞭を取ることになった私は
彼が主任の学年団に配属された
久々に仰ぎ見る先生の顔は
懐かしく重苦しかった
自分の担当科目には自信があったが
一番の弱点を握る人の元で
最初から否定されているような重圧を感じた

職員朝礼後の学年別朝礼
毎週の学年会
臨時の打ち合わせ
生徒との面接の報告
小テストの結果報告

この学校の先生達は
生徒についての情報交換をこんなに密にしていたのかと驚いた
その度重なる会議の中で
いつも彼が一番に確認するのは成績ではなく生徒の健康状態だった
行事の際には企画の内容より安全確認を
事故や事件が起こったときには
事の次第や理由や犯人探しよりけが人の有無を確認した
体調が優れず早退する生徒には手厚く送り出し
家庭との連絡を十分に取るよう指導された
預かった生徒を学校という場所で1日安全に過ごさせる
教員は
ただそれだけを全うすればよいような口ぶりの時さえあった
近隣の他県からも生徒を集める進学校の学年主任が最優先させることが
こんなことかと意外だった

学級担任や
ましてや教科のみの担当教員では見落としがちな生徒の動向を
なぜか彼はいつも指摘した
代わりにその生徒のできることを聞きたがった
ちゃんと生徒を見ていなければ答えられないことで
私は時々返事に困った

授業態度が気になる生徒のことを相談すると
「この子は掃除をちゃんとするか
 ちゃんとするヤツは大丈夫」と言った
何が大丈夫なのか分かるまでに
私には10年の教員経験が必要だった

亡くなった知らせを受けて
そんなことが次々と思い出されてはっとした

あのとき
私は既に許されていたのだ

生徒としての体験と
教員になってからの経験は
接点を持たぬままずっと私の中にあった
それを重ねてみる ただそれだけのことが
昨日までの私にはできなかった
生徒が「育つ」ということへの愛情あふれるまなざしを間近で見ながら
それがかつて自分にも注がれていたのだと
思ってみる余裕がなかった
科目へのコンプレックスが
多くのものから私を遮っていた

おまえはそれでよい と言ってくれる人を
私はいまだに探している
けれどそれは
とうの昔に私の傍にあり
これからは生涯変わらぬ視線として
天から注がれるものになったのだ

先生の訃報に触れて初めてそれは自然に合致した
訃報を受けなければ
明日も私は気付かぬままだ

棺を乗せた車が長いクラクションを鳴らして葬祭場を出るとき
感謝の気持ちと自分の愚かさにただ涙して
私は顔も上げられなかった












09:42:12 | 未分類 | コメント(0)

 2006.09.07 Thu












         会わなくても分かること

         会ってみて 分かること

         会ったあとで分かること

         会えなくなって分かること











13:27:10 | 未分類 | コメント(0)

 2006.09.08 Fri












響き合うために出会った
新しい人の言葉
その言葉を支える
これまでの生き様
そして
そこから目指す
次の自分













20:47:16 | 未分類 | コメント(0)

 2006.09.09 Sat






繰り返す

私の中に
ひとつの約束を刻み付ける

忘れないように
間違えないように

時を置いて
もう一度繰り返す

その制約をこなし
自由になるために











13:26:10 | 未分類 | コメント(0)

 2006.09.09 Sat






こうしてあなたの言葉に時おり触れる喜びは
いつまで許されるだろう





                     いつからか
                     これは私ひとりの物語ではなく
                     それぞれの時間軸が互いに呼び合い
                     止めようもなく接点を持つのだと信じている











16:37:19 | 未分類 | コメント(0)

 2006.09.09 Sat












         ここにいたい と 思う場所があり

             そのことが私を

        驚くほど弱く 信じられないほど強くする











16:49:20 | 未分類 | コメント(1)

 2006.09.09 Sat









「以前あなたに言われたこと」だと 君は切り出した

時を経て私のもとに還ってきた言葉は

私の中に 確かに符合する鋳型を探り当てた

いつ どこで 君にそんな話をしたのかは忘れてしまったけれど

嘘をついていなくてよかったと思った

過去の君を大切にできていたことがうれしかった














17:07:35 | 未分類 | コメント(2)

 2006.09.09 Sat












ここ数日 私の中で鳴り続けている唄があり
その旋律が 出口を求めて体の中をめまぐるしく動く


内側から体を探られる感覚に 胎動を思い出す


























22:57:41 | 未分類 | コメント(0)

 2006.09.10 Sun












   降り続く雨が
私の内と外の浸透圧を同じにし


               呼び合う水は境界を越えて交わり


         遠い水は私の中へ
            私の水は遥か遠くへ



                  行きつ
                        戻りつ



                           壮大な循環を促す













08:52:59 | 未分類 | コメント(0)

 2006.09.10 Sun






足し算で生活をしてきた。
これができたら、次はこうしよう。
今やっていることが終わってから、後のことを考えよう。

目標ができた。
引き算で準備するようになった。

そこに到達するためには、まずこれをこなさなければならない。
今やっていることは、この辺りまでで終えねばならない。


   状況を動かすためには
   自分が具体的に動くことだ。


迷いがあったとして
逡巡している間は何も進まない。
本当にそこへ行きたいのなら
迷いくらいは連れてゆけ。











22:43:08 | 未分類 | コメント(1)

 2006.09.11 Mon






次へ駈けてゆく人
いつも風を連れている
強い瞳

ずっとここにいる人
必ず私の場所を用意してくれる
温かい肌

遠くへ去った人
耳のウズマキに残された
懐かしい声

今日出逢った人
互いの理由を知らぬまま
分かち合う涙











17:26:51 | 未分類 | コメント(2)

 2006.09.12 Tue






身体の確認

緊張をほぐし 
液体化した自分をイメージする



                  声の確認

                  楽器としての身体から
                  最も負担の少ない声を「鳴らす」











22:25:15 | 未分類 | コメント(0)

 2006.09.13 Wed





      ひとりの時間を自分のために使い切ることに

     うしろめたさを感じる必要などないはずなのだが

    あまりにも自分のことばかりに集中する時間を持つと

   何となく落ち着かなくなってきてあれこれ気にかかり始め

    雨続きで乾きもせぬのにまめに洗濯機を回してみたり

     子どもの顔を思い浮かべつつ煮込料理を作ったり

      少し早めに衣更の準備をなどと思ってしまう











20:32:57 | 未分類 | コメント(0)

 2006.09.14 Thu






思うようにならないことも含めて自分なのだと気付き始めて
思わぬことが起こること自体を楽しめるようになった

必要があれば上手にだまされることも大切だと分かった時
なおいっそう相手を信じてゆけると安心した

裏切るとか 出し抜くとか 嘘をつくとか

作為的でなくとも起こりうる不幸な事態は
それだけでは
もう私を傷つけることはできない











14:18:43 | 未分類 | コメント(3)

 2006.09.14 Thu






カブトムシのじろうから眠りが消えた
暑い間は昼間姿を見せることはなかったのに
今月に入って
昼も夜も土に潜ることはなくなった

 瞑想とは仮死の状態です
 だから瞑想をたくさん積めば
 本当の死が先送りされ
 限りなく延命できるのです

怪しい宗教家の言葉がふと思い出される
眠りを失ったじろうは残る命を急速に消費してゆく

エンデの小説に
遅く歩くほど速く進むサカサマの世界があった
少女は追っ手から逃れるためになおゆっくり進み
それを追う灰色の男達は
スピードを上げるほどに引き離された
数日前から左の中の脚が麻痺してしまったじろうは
たどたどしい歩みでのろのろと餌場にのぼる
その餌も
おととい昨日と食べ残した

全ての生命活動を減速することで
加速する死への移行
それでも
死ぬまでじろうにはじろうの時が流れ
死によってそれが私達に手渡される

その瞬間
この掌に受け止める
命 の 感触












16:43:52 | 小さき人たち | コメント(0)

 2006.09.14 Thu






やるべきことは多いが
できることはどれほどもない

こんな思いを何度繰り返してきただろう

進むほどに道のりの遠さを知る
重ねるほどに不確かな足許に迷う

けれど

たどり着かなくて
不十分だから
今日も私はそれを目指すことができる
いつか
終わりのない物語から
言葉のナイフひとつで私を切り抜いてみせる











23:37:34 | 未分類 | コメント(0)

 2006.09.15 Fri






あなたに対して私はいつも
たいそう本気で腹を立てる
腹を立てる時は本気でないといけないと
いつも思っているからだ

あなたが喜んでいるのを見ると
我慢していても頬がゆるむ
小さな体に収まりきらずはみ出した喜びが
ぱちぱち弾けてこそばゆいからだ

あなたの鋭い勘を私は知っている
だから
喜びも怒りも悲しみも
掛け値なしで伝えたい
ありのままで分かち合いたい

あなたが私にくれたいくつもの出来事に
今日も真剣に心揺らすことができたと思う

ありがとう

目を覚ましたら
この幸せをあなたと分かち合おう











18:34:45 | 小さき人たち | コメント(0)

 2006.09.15 Fri












ぞんじーぞんじーぞんじーぞんじーぞんじーぞんじーぞんじーぞんじーぞんじーぞんじー
   ざ   ざ   ざ   ざ   ざ   ざ   ざ   ざ   ざ   ざ
ピグモンピグモンピグモンピグモンピグモンピグモンピグモンピグモンピグモンピグモン
      どむ      どむ      どむ      どむ      どむ





               今夜の食器洗い機の四重奏。











23:26:47 | 未分類 | コメント(0)

 2006.09.16 Sat






 お古だけど 使えたらどうぞ
 要らなかったら 捨ててね

近所のお姉ちゃんの母上から譲られたパジャマに
うれしそうに袖を通す子ども
着てみるとやはりサイズが大きい
袖口も足首もくるくると折り上げ
それでもご満悦

 ピンクのくまさんだね
 かわいいね うれしー

翌朝のベランダ
ひるがえる洗濯物に
ピンクのくまも仲間入り
干す時は気付かなかったが
午後
取り込んだものをたたむとき
そのパジャマから
ふと 香る
違う洗剤の匂い

ピンクのくまはまだ
我が家に引き取られたことに
納得が行かないようだった











20:28:11 | 小さき人たち | コメント(0)

 2006.09.18 Mon






ずいぶん待ったのだけれど
少しも色が変わらない
何かのはずみでひと枝折れたのをきっかけに
庭のカラーピーマンを収穫した

もう大きさは十分で
重そうだけど大丈夫かなと心配していたところだから
触れてみると少し硬いようだけど
初めて育てたから具合が分からない
柔らかな薄緑の光沢を
大切にハサミで切り落とした

一度に8つもあったので
毎日ひとつずつ食す
調理してみると肉厚の上ほのかに甘い
子どもの評判は上々で
カラーとはこんな色のことだったのかと思っていると
変化は突然起こるのだ

3日目の朝
子どもが見つけた
テーブルに転がしてあった残るピーマンの
ヘタのあたりにかすかな紅が差している
「ねぇ ちょっと置いとこう」
今日はそのまま要観察

次の日
紅は一段と増し
夕刻までになお色づいた
「きれいだねえ」
本日も鑑賞のみ

翌朝
筆で掃いたように美しい朱が
体の半分位まで広がって
誰も食べることなど口にしない
摘み取られてなお全力で熟れてゆく
果実の気迫のようなものに
なんだか手も足も出せないのだ

今夜ここで数回目の夜を過ごす
そのひんやりとした静かな手触りの中に
この瞬間も
激しく動き続ける力がある
知ってしまうと
まるでその体から
音が聞こえてくるようだ











00:11:41 | 小さき人たち | コメント(0)

 2006.09.18 Mon






季節が変わりゆくことを
いつもより細やかに感じている

咲き残るアサガオの
まだ次のつぼみがたくさん用意されていることや
飼っている夏虫の寿命が思ったより長いことや
約束したまま「あと1回」が果たされない花火の残りや
晴れ間にはまだ遠くで蝉が鳴くことの合間に
忍び込む次の季節
の柔らかな触手

無造作に夏の名残をかき集めていると
その触手の先がするりと指先に触れる
捉えようとするとどこかに逃げてしまうのだが
それは確かにこの後ろ側に身を縮め
こちらの気配を探っている

ビニールプールや水鉄砲を片付けながら
しまい込む物置の薄暗い隅に
黙って秋を潜ませてやる











09:20:28 | 未分類 | コメント(0)

 2006.09.18 Mon






いいことがいくつか続くと
ちゃんと悪いことが起こる
そのかわり
悲しみに沈んでいる私を
小さな喜びが引き上げる

良いも悪いも
ただそればかりでは見逃すことがあると
気付かせるために

何者が仕組むのか
あるいは
自分が種をまくのか











15:42:00 | 未分類 | コメント(2)

 2006.09.18 Mon






律する あるいは バランスをとる

しょっぱいなら砂糖を入れる
甘すぎるなら塩を入れる
濃すぎたら薄めればよい
薄ければ煮詰めればよい
だから 私の料理はいつも味が安定しない
偶然 絶妙の味になる なんてこともない

まんま 生き方も。











20:06:36 | 未分類 | コメント(0)

 2006.09.19 Tue






びにいるのなかのさかな
の目に映る売り場の明かり
その明かりもて
照らせ魚の内部を
外からは窺い知れぬその濁った目の奥に
どんな宇宙が終了したのか
閉じられぬその瞳の中に
どれほどの無限が広がっていたのか

顔を寄せた君は
その瞳が実は小さなブラックホールであると知る
と同時に抗いようもなく
君は目からその穴に吸い込まれ
きれいにつま先まで吸い込まれ
売り場の床に
ただくたびれたサンダルだけが残るのだ

大いなる魚の内なる宇宙に旅立つ前に
君はこの世の見納めと
魚の瞳の内側からこちらを覗く

そこから私が見えるでしょう

君を魚に奪われて
あのとき
どうしてこの手を離してしまったのか
君のつま先を
どうして黙って見送ったのか

けれど遺された私には
何より大切な仕事がある
君の旅立ちを誰にも邪魔させないために
その秘密が誰にも取沙汰されないために
私は涙も見せないで
いかにも平気なふりをして
散らばった君のサンダルを拾い
持っていた紙袋に速やかに片付けて
何もなかった顔で売り場を後にするのです










21:12:05 | 未分類 | コメント(1)

 2006.09.20 Wed












   おやつのとき麦茶を飲みながら。


「このお茶、えーん、えーんって、泣きよったんで。
 マカちゃんとお母さんに会いたかったから。」

会えたね。

「うん。だから今は笑いよるよ。うれしー、て。」











22:49:06 | 小さき人たち | コメント(0)
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