2007.05.30 Wed
寒い部屋でうたた寝をした 夢は見なかった気がするが 目覚める瞬間 喉から食道にかけての内側に張った氷が 一瞬でブロック状にくだけて口からこぼれ出した ような気がして 無意識で口を覆った |
2007.05.29 Tue
花好きの隣のおばあさんが毎日 道端に植えたピンクのつぼみに すぐ傍を流れる用水から 柄の長い杓ですくった水を丁寧にかける手を 今朝はぴたりと止めて 流れて行く川面をすかし見ている オハヨーゴザイマス モースグサキマスネ 挨拶の息継ぎをして気がついた 辺り一面に灯油の臭い おばさんの横に立つと 水面にうっすらと七色の迷彩を描いて 流れる油の模様が朝日に光る きがつかんけん ここまでかけてしもた 柔らかく濡れたこの植物の根元に やさしい手で注がれた悲しい油 まちよるけど なかなかひかんわ 杖のようについていた杓の柄を持ち直し 庭に戻る下駄が 油の混じった水のしみる土の上を 注意深く踏む 土にしみた油は いつまでもここに残る きれいな水をかけて うすめて うすめて うすめたぶんだけ広がって 洗えない 土と花と心 |
2007.05.28 Mon
毎日が続く 愛しい日々が積み重なる 安心と信頼が 昨日よりすこし 子どもを大きくする やくそくはまもりなさい じかんにまにあわせなさい 練習が足りないまま大人になった私は あなたとの約束を何度も破る わすれちゃいけない じかんまであとすこしだ 言い聞かせていたのに 電話のベルひとつが注意をさらい ふと目に止まった紙切れ1枚が 時計を見えなくしてしまう 泣き止んだ柔らかい頬に真剣に詫びて 今日 暮らしのリズムを ひとつ変えた 毎日が続き 愛しい日々が積み重なり あなたの涙が 昨日より少し 私を育ててくれる |
2007.05.24 Thu
指に刺さったトゲを抜く 家の中で一番明るい蛍光灯の下で 眉根にしわを寄せた母が 先の鈍いとげ抜きを構え 刺さったトゲより固い爪先で指をつまみ上げ 周りの皮を剥がしにかかる イタイヨ イタイヨ 顔を背け目をつぶる私は まぶたの中の暗闇に 巨大なとげ抜きの先と 破れる指先からしたたる血と なお深く埋もれて行くばかりのトゲを いつもはっきりと見ていた ハイどうぞ 釈放された指先に載せられたトゲは いつもがっかりするほど小さくて 血を流していたはずの指先には ささくれ程度の赤い傷 その指を 私は必ず口に含んだ 熱い唾液がしみる傷口を注意深く噛んで 血の味を確かめていた 大人になっても トゲを抜くのは難しい 傷口が強くつまみ出せなかったり とげ抜きを持つ手が左だったり 誰かの手を借りねばならないことが憂鬱で 刺さったことを内緒にしてみるのだが トゲは いつまでも そこにあるのだ 触れると痛いだけではなくて 刺さったままだということが いつまでも心につきまとう 上手に抜けないトゲがある 誰かが 通りかかるのを待っている |
2007.05.18 Fri
カミサマを信じる人たちの手で ささやかな幸せの風景が 失われて行く カミサマを持たないという理由で 大切にしていたものを奪われた人たちの 嘆きの声など 聞こえないほど遠い所にいるんだね カミサマは おまけにずいぶん年寄りだから 自分のために働く者たちが その仕事の中に こっそりいろんなことを混ぜ込んでいたり カミサマのせいにして どっさり自分の願いを叶えていたりするのも もう よく見えないのさ おっと カミサマには 何のうらみもないんだよ なにひとつ 約束してくれてたワケじゃなし |
2007.05.16 Wed
空耳のように ちかづく 車 の 音 玄関前でとまり ドアの 音 カギの 音 足音 ちかづく とおざかる 空耳 |
2007.05.14 Mon
か ら い だ る が か だ ら の か な い か な に い が き み |
2007.05.13 Sun
庭の隅に フタをしたままの砂場 隙間からたくさんの雑草が光を目指す 何とかしなければと思いつつ 放置していた怠惰な日々に 今日やっと始末をつける はみだした草の茎は 握りしめるとしたたかな手応え 砂地の中にこれはと思う強さで根を張り巡らせている 観念してフタを開ける 1年間蓄えた闇の中に育てたものは 365匹のダンゴムシ わぁ! 目を輝かせて手を伸ばす子どもたち 引き抜かれた草の根元にうごめく愚鈍な丸みを 愛おしそうに捉える 理解を超えた力によって光を与えられた者たちは ただうろたえて闇を求め 誤ってなお逃げ場のないブロックの上に迷い出る 待ち構えた無邪気な神々に 次の居場所を決められて 新しい闇の中 丸めた体をそっとほどく頃 先程の天変地異を忘れてしまう |
2007.05.10 Thu
山でつかまえて来た と ご近所のおじいさん 白いプラスティック容器 5センチほどの深さまで砂が入っている 中には4匹のアリジゴク 覗き込む 小さなふたつの頭 「アリジゴク……?こうえんの……?」 違うよ 虫だよ ウスバカゲロウの幼虫 アリをつかまえて来て入れてやろうね 「ありさん おそとにおるよ」 「いこ」 「うん」 大きなアリはどこだ 家の周囲を探してみる 体長1ミリ程度の小さなアリばかり 「神社の方におるかも」 駆けて行く小さい足 それを追う 更に小さい足 幼い指たちが 捉えようと追い回す そんなに強くつまんだら ほら 「だめや ちいさすぎる」からではない 「わ つぶれた」いや つぶしたのだよ お向かいの家庭菜園の ブロックの割れ目に 大きなアリたちが見え隠れ たくさんの犠牲を出して すこし上手になった指先が 次々とビニール袋に捕獲する 「ありさん おったね」 「もうええやろ」 覗き込んだ容器の中の砂は いくつもの丸いくぼみを作って待っていた 傾けて ふるい落とすビニールから 少し弱ったアリたちが滑り落ちる 「おともだちがきたよー」 あれだけの説明で すべてを理解した少年は 妹の誤解をあえて訂正せぬまま 静かに容器の中を見つめる |
2007.05.06 Sun
健康で1日を終える ただそれだけが繰り返されると 子どもは大人になってしまう なんだか つまらないな |
2007.05.05 Sat
ちず みよったら 「ちちじま」とか 「ははじま」いうのが あったんで 「ちちじま」って おとうさんがいっぱいおるしまで 「ははじま」って おかあさんがいっぱいおるしまかな |
|
| HOME |
|